(2011.5.5.更新)

このコーナーでは、子どもの心関連の情報を提供します。

1)災害と子どもの心

 このページの書き換え作業中、平成22年3月11日東北関東大震災が起きました。現実とは思えない大津波、度重なる余震に加え福島原発事故と未曾有の事態が次々と連鎖的に続いています。県内からも支援活動が積極的に展開され、避難して来られた方々への支援が始まりました。

 新潟県でも、平成16年に三条市を襲った水害、中越大地震、平成19年の中越沖地震と災害に見舞われ、心のケアが今なお必要な子ども達がいます。安心を担保し続け、子ども達の笑顔を絶やさないようにしてあげたいものです。

 日本小児科医会ではリーフレット「子どもの心のケアのために」を用意しています。

ホームページからもダウンロードできますのでご利用下さい。

 http://jpa.umin.jp/kokoro.html

2)児童虐待の予防に向けて

 児童虐待は統計を取り始めた平成2年から増加の一途をたどり、平成12年には児童虐待防止法が制定され、国を挙げての対応がなされてきていますが、減少の兆しはまだ見えていません。虐待の通告はそれに気付いた国民の義務ですが、児童相談所の他に平成17年からは市町村にもできるようになり、市町村には要保護児童対策地域協議会が設置されています。

 平成21年度の全国の児童虐待通告件数は44,211件でした。年齢は小学校入学前が42%と最も多く、虐待の種類別では、身体的虐待39.3%、ネグレクト34.3%、心理的虐待23.3%、性的虐待3.1%でした。近年の傾向としては、ネグレクトの比率が増してきています。子どもにとっては適切な養育がなされていないことも虐待であるという認識が高まってきたことが伺えますが、性的虐待の比率はまだまだ低く、発見され難く通告に至っていない例が多いのではと推測されています。虐待者は実母が最も多く59%で、次いで実父26%です。この傾向は当初より変わりありません。

 県内では、平成21年度、児童相談所への通告件数は805件(平成20年度813件)、市町村に759件(同839件)と、初めて前年数を下回りましたが、平成22年6月には新潟市でも父親による生後1カ月児の死亡事件が発生しています。

 平成22年7月の大阪市2幼児放置死事件は、孤立していた若い母親一人を責めて済まされる問題ではなく、他人事とは思えなかった人も多かったことと思います。虐待の発生予防と早期発見・予防対応は喫緊の課題となっています。

 経済的な困窮、不安定な就労、夫婦間の不仲、望まぬ妊娠、ひとり親家庭、親自身が虐待を受けた、育てにくい子どもなどなど、虐待に至る要因は様々ですが、これらの要因が複数重なり、そこにさらに孤立感が高まれば、虐待は誰にでも起こりえます。近年の脳科学の研究では、虐待は発達途上の子どもに脳機能障害をきたすことがわかってきました。特に乳幼児期では、愛着障害をきたし易く、人に対する信頼関係の基礎となる愛着形成不全の再構築には多大な困難をきたしてきます。

 虐待予防策の一つとして、平成19年度からは、生後4カ月までに全戸訪問する「こんにちは赤ちゃん事業」が市町村で展開されています。もちろん従来通り、乳幼児健診でも育児の相談にのってもらえます。

 子どもの世話をした経験がないまま親になる事が一般的となった現代、様々な子育て支援策が展開されていますが、県小児科医会では、子育て支援はまず親支援からとNP(Nobody’s Perfect完璧な親なんていない)プログラムの推進に協力してきました。NPプログラムは、子育てが難しいと感じている0〜5歳の子を持つ保護者向けにカナダで開発された親教育支援プログラムで、孤立育児の解消、育児不安の軽減に有効で、虐待予防にも期待され、急速に全国に広まってきています。新潟県内には平成22年度末で、106人のNPプログラムのファシリテーター(進行役)が養成されます。今後は、各市町村でプログラムが積極的に展開され、エンパワーされた親同士での子育て仲間の育成につながっていくことが期待されます。

3)子どもの遊びと子どもの心

 外での遊び場が少なくなり、遊び仲間も近くにいない子ども達にとって、屋内でのテレビやビデオ視聴の他に、コンピューターゲームは今や揺るぎない地位を占めてきています。また、多機能な携帯電話も子どもの所持が容易な現代、事件に巻き込まれることが決して稀なことではなくなり、子ども達へのメディアリテラシイ教育が急がれます。ゲームは子ども達にとって代え難い魅力/楽しみとなった今、使用禁止ではなく、また子どもに管理をまかせっぱなしではなく、ルールを守って使っていく事を教えていきたいものです。

 一方で、自然界での実体験が少なく、異年齢集団での子ども同士の遊びの体験もできにくくなっている子ども達は、現実と虚の世界の区別がつきにくい中にいるということも知っておく必要があります。

 このような遊びの変化、人との関わり合いの幅の狭さ・希薄さが関係してか、学校での暴力行為は平成17年より目だって増加しています。文部科学省によりますと、平成20年度の暴力行為は3年連続増の6万件(平成16年度の約2倍)とあります。中学校が最多で42,754件(前年度比16%増)、小学校6,484件(同24%増)と小中学生で増加しています。不登校もなお小中学生で12万人(中学生では39人に一人)と減少傾向にはありません。登校渋り、休みがち、保健室等別室登校はそれ以上ですので、どの学校にも起きている大きな課題となっています。

 日米中韓4カ国の中高生を対象に、(財)日本青少年研究所が平成16年に実施した調査では、「自分はダメな人間だと思う」としたのは中学生56%、高校生66%と日本が最も高く、ユニセフ(国連児童基金)の平成19年の「子どもの幸福度」調査では、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で15歳の子どもたちが「自分は孤独だ」と感じている割合は、日本は約30%(他国は約5%)と目立って高かったとあります。

「子ども一人育てるに村中の人が必要」とはアフリカの諺です。子どもは親だけでなく多くの大人の手で育てられるのが自然なのです。子ども達の遊び、人との関わりを考えていかねばなりません。

4)発達障害と子どもの心

 平成17年に発達障害者支援法が施行になり、平成19年からは特別支援教育が全面実施となって発達障害への理解が進んできました。一方で、診断は? 治療は? 将来は? と困惑・混乱も起きています。

 発達障害とは、診断名では広汎性発達障害(自閉症または自閉性障害、アスペルガー症候群またはアスペルガー障害、非定型自閉症または特定不能の広汎性発達障害)、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)、学習障害(LD)などが挙げられています。発達過程の中で症状に気付かれていきますが、脳の機能障害が原因であって育て方が原因ではないとされています。

 広汎性発達障害では、社会性・コミュニケーションの障害の他に、こだわりや関心の幅の狭さがあり、些細な事でショックを受けやすく、臨機応変な集団行動がとれないことも多く、感覚過敏(聴覚過敏、嗅覚過敏など)も合併しがちで、不安感や苦手意識は一気に高まりパニックになることもしばしばです。不登校に至る機序としては容易に理解されます。感覚過敏には不快感の軽減が必要です。子どもからは言ってくれないことが多いので、察して対応しなければなりません。視覚情報の処理は優れている事が多いので、話しことばよりも絵や図・文字で示す事で、内容をより正確に伝える事ができます。安心できる環境で、自信を損なわないようにしてあげると、能力を発揮して問題無く居られるようになっていきます。

 AD/HDでは、気が散りやすく落ちつきなくじっとしていられない、無くしもの忘れ物が多い、おしゃべりが過ぎる、何回注意しても同じ失敗をするなどで、よく叱られます。

叱るよりも先に誉めることが大事ですが、その余裕が大人の方に無くなってしまっていることが多いです。幸い、AD/HDには、薬物療法も可能になりました。

 知的な遅れが無いのに読み・書き・計算のいずれかに困難を示す学習障害(LD)には個別の学習支援が必要です。

 適切な理解がないと、わがまま・しつけが悪いと誤解され、叱られ続けたり過剰な我慢を強いられたりと、親子共々疲弊し、自己評価を低め様々な二次障害をきたしてきます。不登校や引きこもり、家庭内暴力、学校での暴力行為、非行、無気力、抑うつ状態、心身症、摂食障害(拒食、過食)などは、発達障害が背景にあっての二次障害ではないかと再検討されるようになりました。

 育てにくさを示す子ども達ですので、虐待のリスクはあがります。いじめやからかいの対象にもなりやすく、守ってあげる必要があります。感じ方、学び方の違いを受けとめ認めていける保育、教育が必要です。ペアレント・トレーニングやソーシャルスキルトレーニングで具体的な関わり方、接し方を学べるようにもなってきましたし、幼児期の子育て支援から特別支援教育、そして就労支援までと、少しずつ制度も整備され対応策が広がってきていますが、まだまだこれからです。

 生来の発達特性には、その特性で困らないような、それを強みとして活かせるような生活/社会参加の仕方を工夫していくことができるはずですし、二次障害は予防したいものです。発達障害を持つ子どもは1割近く存在すると言われています。早期の気づきと診断が大事とされますが、発達途上にあって環境要因に影響を受けながら変化していく子どもでは、確定診断できない場合も多くあります。診断が確定していなくても困り感には具体的な手当が必要です。その手当が適切であれば、問題が解消してしまうこともあります。発達障害を「障害」とするか、「ユニークな特性」とするかは、理解と具体的な支援策の有無にかかっていると言えます。

5)医療機関/相談機関

子どもの心の問題が心配される場合に診療や相談が受けられる主な機関を紹介します。

 ①病院/医院

  黒川病院(胎内市)   児童精神科     TEL 0254-47-2422

  新潟大学医歯学総合病院 小児科/児童精神科 TEL 025-223-6161

  県はまぐみ小児療育センター 小児科/児童精神か TEL 025-266-0151

  県立吉田病院      子どもの心診療科  TEL 0256-92-5111

  県立精神医療センター  児童・青年期外来  TEL 0258-24-3930

  長岡中央綜合病院     小児心身症外来  TEL 0258-35-3700

  新潟病院(柏崎市)             小児科  TEL 0257-22-2126

  かわちクリニック(新潟市中央区)       TEL 025-248-1030

  常山小児科医院 (新潟市中央区)       TEL 025-286-3311 

 その他にも診療を受け付けている医療機関はあります。多くが予約制ですので、確認してから受診をして下さい。

 ②相談機関

  中央児童相談所   TEL 025-381-1111

  新発田児童相談所  TEL  0254-22-5111

      長岡児童相談所   TEL  0258-35-8500

      六日町児童相談所  TEL  0257-70-2424

      上越児童相談所   TEL 0255-24-3355

  新潟市児童相談所  TEL 025-230-7777

  新潟県発達障がい者支援センターRISE  TEL  025-266-7033

      新潟市発達障がい者支援センターJOIN  TEL 025-234-5340   

 


子どもの心ミニ知識
 第1講: 「注意欠陥/多動性障害ADHD」の巻>>
 第2講: 「チック症」の巻>>
 第3講: 「子どものうつ病」の巻>>
 第4講: 「不登校」の巻>>


m-gyak-1 子どもの心ミニ知識
■ 第1講: 「注意欠陥/多動性障害ADHD」の巻 >>  (2002/4/3)
■ 第2講: 「チック症」の巻 >> (2003/2/5)
■ 第3講: 「子どものうつ病」の巻 >> (2004/1/25)
■ 第4講: 「不登校」の巻 >> (2006/3/28)

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第1講: 「注意欠陥/多動性障害ADHD」の巻
 気が散りやすく不注意で間違いや忘れ物が多く、落ち着き無く少しもじっとしていられず多動で、衝動的に行動してしまって著しく困る状態を、注意欠陥/多動性障害(ADHD)と言います。男の子に多く、発生率は3%くらいと言われていますので、教室に一人くらいはいることになります。

 原因としては、未熟児出生、周産期障害、アルコールやタバコの関与の他、家族的にもみられ、遺伝要因/環境要因が種々考えら れています。脳の前頭葉の機能が未熟であるという研究結果もあり、軽い発達障害と 考えて対応策が求められます。

 ADHDが問題になるのは幼児期後半からです。保育所や学校では、飛び出したり、けんかになったり、目が離せず、わがままで勝手な問題児として、注意され、叱られがちで、親も、しつけの問題と言われ、輪をかけてしかったり、自責の念にかられたり、深刻な悩みとなっています。

 叱られても、少しも懲りずに平気でいるように見えますが、子どもは思いの外、誉められることに飢えていたり、傷ついていたりします。からかいや、いじめも起きがちです。

 多動さは小学校高学年になるとおさまってきますが、自分をコントロールするコツを伝授されることなく、失敗体験を積み重ねてしまえば、何をやってもうまくいかないと、自己評価を低めて自信を無くし、やがて無気力になったり、やけになったり、勉強嫌いや抑うつ的で不登校になったりもします。これらは、二次的な情緒障害症状です。学習面でも、個別の配慮が無いままですと、高学年では学業不振が必発です。


 ADHDは他に、学習障害(LDといい、知的には問題ないのに読めない・書けないなど、特定の学習領域に著しい困難を呈する状態)や、発達性協調運動障害(いわゆる不器用)を合併することがあります。また、高機能広汎性発達障害(社会性・コミュニケーション・行動面が異質で、自閉的とされる知的に大きな遅れのない発達障害)でも落 ち着きなく衝動的な行動様式はしばしば見られます。それぞれに応じた理解と対応が、保育所や学校との連携のもとなされねばなりません。

 ADHDの子ども達は、一般に、明るく好奇心旺盛で活動的です。そんな利点を取り立 て、成就感や成功体験を重ね、自分がかけがえのない大切な存在であることを、子どもに十分に伝えていく必要があります。併せて、親に対しても、ADHDが子育てのまずさの結果では無いことを強調してあげる必要があります。親子ともに自信を取り戻していくサポートが必要です。

 大人に対し、拒絶的、反抗的、挑戦的な行動に出て、それが日常困る程度になっている状態を「反抗挑戦性障害」と言います。ADHDの子ども達が至りやすい状態と言われています。時には「行為障害(いわゆる非行・犯罪)」を起こすことも知られてきました。これらも二次的に併発してきた問題行動であり、周囲の無理解が来した結果とも言えますし、ここまで子どもを追い込んではいけません。

 ADHDに対しては、中枢刺激剤リタリンという薬が有効なことがありますが、有効持続時間は数時間で、食欲減退など副作用もあります。医療機関できちんと診断をあお ぎ、十分な説明を受け、子どもとも相談の上試してみると良いでしょう。

 過去に偉業を成し遂げた方の中で、ADHDであったと思われる方がたくさんいます。 おおらかな時代には、あまり問題にならなかったのかもしれませんが、良きサポーターに恵まれた結果とも考えられます。良きサポーターを目指して、「えじそんくらぶ」 が啓発活動を展開しています。
(ホームページhttp//www.e-club.gr.jp/  〒358-0011埼玉県入間市下藤沢1319 FAX042-962-8683)  

 対応の仕方によっては、子どもの問題行動を軽減することも増悪することもありうるADHDに対し、医療と教育、心理の関係者がネットワーク良く、子どもの自己実現を目指した支援を進めていかねばなりません。現在、厚生労働省でも診断と治療のガイ ドラインを準備中です。 
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第2講: 「チック症」の巻
 チックは子どもにしばしば見かける広い意味での習癖(くせ)の一つで、医学的には、「突発的で、急速に、反復される、非律動的な運動または発声」と定義されます。無意識のうちにやる不随意運動の一種です。

 5~10人に1人くらいみられるともいわれます。年齢的には、4~11才、特に7才前後の子どもに多く、男の子に多く、女の子の約2倍みられます。

 目をパチパチさせる「瞬き」が最も多い症状で、これと「頭を振る」「咳払い」の3っつで、初発症状の70~80%を占めるそうです。

 体のいろんな部位に起きてきますが、「瞬き」「頭を振る」「顔をゆがめる」「肩をピクッとさせる」「身体をくねらせる」など、運動として症状を出してくる場合を「運動チック」と言います。「咳払い(風邪の咳きと間違われることがあります)」や「鼻をならす」「変な声を出す(アッ、アッとかん高い声をくり返すなど)」「汚言を発する」など、発声を伴うものは「音声チック」と言います。両方混じって出る場合もありますし、それぞれ単純なものから複雑なものまでいろいろあります。変なことを繰り返しする場合には、それがチックかどうかまず診断してもらうことが必要です。

 叱られた後、学校や幼稚園での行事で緊張している、いじめ、両親の不仲など、誘因として心理的ストレスが背景に察しられることがあり、心身症とされるゆえんですが、誘因が察しられるのはチックの約1/3にすぎません。他の2/3は誘因なく発症します。チックを起こしやすい素質が親子で伝わることもあり、近年の研究では、背景には脳の働きの問題があり、脳の発達の過程で、運動を調節する部分の働きがうまくいかないことが推察されています。

 チックの症状は、経過を見ていきますと、親の育て方は根本的な原因ではありませんが、親の態度など周囲の状況で症状が変化することがあります。不安や緊張、疲労、興奮(楽しい場合も)などで悪くなることもありますし、何の理由もなく軽くなったり、重くなったりすることもあります。

 多く自然経過の中で、1年以内に軽快・消失していく一過性のチックですので、様子をみているだけで済みます。回りは慌てず騒がず、受け入れることが大切です。チックがあっても普通の生活でかまいません。テレビを見ている時に目をパチパチさせるので、テレビは見させないとするのは、子どもには気の毒です。本人は意識していませんので、止めさせようと叱ったり注意したりするのは良くありません。

 もちろん、心理的誘因が察しられる時には、誘因となるストレス状況を取り除いてやるか、心情を察して気持ちをことばで表現できるように配慮してあげると、良くなることがありますので、そうしてあげて下さい。本人には心配ないことを伝え、安心してもらうことが大切です。

 「食事中、チックのためにこぼしてしまう」「教室で授業中に声が出てしまって耳障り」など、日常生活で困ることがあれば、症状を軽くする薬がありますので、かかりつけの小児科医に相談してください。

 まれに、1年以上、運動チックに音声チックが頻発し、なかなか直らなくて困る場合があります。難治性のチックで、トウレット症候群(トイレットではありません)と言われるものです。経過をみないと診断できませんが、この場合でも15才を過ぎると軽快する場合がほとんどですので、困らない程度に薬で軽減をはかりながら、根気よくチックと付き合っていってもらいます。

 注意欠陥/多動性障害(ADHD)を伴っている場合が時にあります。その場合には、落ち着きが無く、多動で、衝動的であるがために困っていることへの対応策が別に必要となります。

 学業不振、不登校、抑うつ、攻撃性など他にも困る状況がある場合には、それぞれに子どもからの何らかのSOSと考え、保育所・幼稚園、学校とも相談する必要があります。
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第3講: 「子どものうつ病」の巻
 近年、大人のうつ病が急増しています。大人では、生涯のなかで5~6人に一人がうつ病にかかると考えられ、うつ病はごくありふれた「脳のかぜ」のようなもので、精神科の病気の中では最もなおりやすいものの一つです。まじめな方がなりやすく、なりやすい傾向に、ストレスなどの心因と、疲労など体の不調が重なって発症してきます。
 一般的な症状としては、気分が沈んで何をしても楽しく無く、眠れなくなったり食欲が落ちたり、疲れやすくなります。集中力や決断力が低下し、自分を責め、死ぬことを繰り返し考えたりします。脳内の神経伝達物質の働きが低下した状態にあることがわかっており、その働きを改善する薬(抗うつ剤)があります。まずは十分な休養ですが、併せて悲観的な考えを修正していく認知療法も勧められます。

 従来うつ病は大人の病気と考えられ、子どもにもうつ病があるということはあまり知られていませんでした。欧米の研究では、2~9%の子どもがうつ病にかかっているとの報告があります。8才児で2.7%という日本の報告がありますが、10代、思春期ではもっと多く、めずらしくないと思われます。大人と同様、近年増加しているとの指摘もあります。

 子どものうつ病が見のがされてきた理由の一つに、憂鬱な気分を適切にことばで表現できないことがあげられます。うつ病は気分だけの病気でなく、心と体の両方に症状を出してきます。子どもでは、頭痛や腹痛などの体の症状やイライラ感、社会的ひきこもりが見られることが多く、思春期やせ症や過食など他の精神疾患の陰に隠れてしまって気付かれにくいこともあります。抑うつ気分が怒りや反抗として表現され、切れやすく暴力的になる場合もあります。いじめや事故・災害など恐い体験をした後に起きてきたり、転居や転校・肉親の死が不安で発症してくることもありますし、家族間の軋轢を感じていることもあります。不登校の背景にうつ病の可能性も考えられます。また、落ち着きが無い・集中力がないということで症状を出すこともあり、注意欠陥/多動性障害ADHDと誤診されることもあります。逆に、ADHDの子どもが、叱られ続け自己評価を低めてうつ病になることもあります。無気力となったり、自分をダメな子と思い込んでいることが多く、時に自傷行為(リストカット)に至ったりします。そして子どもの自殺は何としても予防しなければなりません。 

 早期発見、早期治療が有効です。子どもの段階できちんと治療しないと再発が多いということもわかってきました。治療は、背景にあるきっかけとなった要因に応じてですが、まずはゆっくり休息です。「がんばれ」と励ますのはよくありません。そして、子どもの抑うつ気分や不安感を解ってあげましょう。子どもにも使える副作用の少ない抗うつ剤が開発され、治療がしやすくなりました。あせらず、あわてず、あきらめずです。子どもにも治療の同意を得て進めていきます。

 イライラや落ち着きの無さ、学業不振が気になる時、子どものこころの元気度をチェックしてみませんか?参考までに「バールソンの抑うつ傾向自己記入式評価尺度」を掲載します。16点以上であれば「抑うつ傾向あり」と考えますが、全てがうつ病と診断されるわけではありません。診断されなくても、抑うつ傾向には、予防的に何らかの手立てがあった方が良いかと思います。子どものうつ病、見のがさないようにしたいものです。
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第4講: 「不登校」の巻
 朝、登校時間が迫ってきているのに、子どもが起きようとしなかったり、ぐずぐず言って支度しようとしなかったり、「お腹が痛い、頭が痛い、気持ちが悪い」と言うことが続くと、たいがいの親は、もしかしたら学校に行きたくないのでは?と動揺します。そして、不登校になっては大変と、励ましたり諭したり、時には脅してみたり叱ってみたり、何とか学校に行かせようとするでしょう。

 文部科学省によると、年間30日以上欠席している小中学生は現在13万人にも達しており、その心理的背景要因は一人ひとり違いますが、不登校は日常的な社会現象となっています。多すぎる刺激の中で、現代の子どもたちは、慢性的な疲労状態にあることを指摘する声も聞かれますが、ここは、大人としての理解と工夫をもって応援してあげる必要があります。

 まずは、「今は行きたくない」という気持ちを分かってあげましょう。それだけで元気になる場合もあります。「甘えだ、怠けだ」などと感情的に問いつめないでください。そして、生活リズムを整えることから始めましょう。睡眠時間は充分でしょうか、ゲームやテレビ・ビデオに浸り過ぎていないでしょうか、習い事や学習塾でスケジュールがつまっていませんか。家で子どもが元気にしているようなら、家の中でできるゴミ捨てや皿洗い、洗濯などに積極的に参加させてください。学校に行けないでいることへの後ろめたさを軽減し、役立ち感や達成感を実感できるチャンスを与えて誉めてやってください。

 次に、行きたくない理由について一緒に考えてあげましょう。

 勉強がわからない?
 友達とのトラブル?
 担任の先生が嫌い?
 給食が負担?
 体育が嫌?
 音楽が嫌?
 ざわざわと騒がしいのが耐えられない?
 それとも、登校班がこわい?

・・・重複している場合もあります。子どもはことば足らずですし、あえて言いたくない場合もあります。でも、語ってきたら共感して耳を傾けてあげてください。大人にしてみればささいなことでも、社会経験も少なくストレスの適当なやり過ごし方を知らない子どもは、不安を全身で感じ緊張して固まってしまっているのかもしれません。とても繊細で敏感で傷つきやすいところがあります。

 身体の不調を訴えている場合は、無理せず休ませましょう。休日に訴えがないようであれば、学校がストレスになっていることが窺えます。訴えが続くようであれば小児科医への受診をお勧めします。起立性調節障害のために朝起きられないようであれば血圧の調節を改善する薬が有効です。うつ病では、朝調子が悪く昼頃から次第に元気になりますが、学校が嫌でさぼっているのではなく、眠れない・イライラする・無気力など他の症状もあります。その場合、ゆっくりと休息をとることと抗うつ剤が有効です。ストレスで身体に様々な症状を出してくる場合を心身症と言いますが、慢性的な下痢や腹痛で悩む過敏性腸症候群もその一つで、薬物療法の他に心理療法が必要です。また、人の目が気になり大勢の人が集まる学校に行けなくなるといった不安障害も増えてきています。この場合には、そういう自分を肯定的に受け止め自分に自信をとりもどしていけるよう長期的な支えが必要です。

 背景にある要因にできるだけ対応しながら様子をみて、エネルギーが余って退屈してきたら登校刺激を与えていきます。どんな参加の仕方なら大丈夫か子どもと相談しながら、まずは学校の中で安心していられる場所に行くことから始めます。教室に行けなくても保健室ならいられるということもあります。学校は無理で、学校外の少人数の適応指導教室なら行けるという場合もあります。学習への個別の配慮は言うまでもありませんが、欲張らず、無理せず少しずつチャレンジしていけば良いのです。友だち関係でつまずいた場合は、自分を大事にしていって良いことを伝えます。

 不登校は、さぼるのが下手な、断るのが苦手な真面目ながんばり屋さんが、ふんばりきれなくなって発するSOSであるとも言えます。不登校になったことに罪悪感を抱かせることなく、行きづまった時には他のやり方があることを教えてあげられる好機ととらえ、大人として、あせらず気持ちの余裕を持って臨みたいものです。
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