(2011.5.5.更新)
このコーナーでは、子どもの心関連の情報を提供します。 1)災害と子どもの心 このページの書き換え作業中、平成22年3月11日東北関東大震災が起きました。現実とは思えない大津波、度重なる余震に加え福島原発事故と未曾有の事態が次々と連鎖的に続いています。県内からも支援活動が積極的に展開され、避難して来られた方々への支援が始まりました。 新潟県でも、平成16年に三条市を襲った水害、中越大地震、平成19年の中越沖地震と災害に見舞われ、心のケアが今なお必要な子ども達がいます。安心を担保し続け、子ども達の笑顔を絶やさないようにしてあげたいものです。 日本小児科医会ではリーフレット「子どもの心のケアのために」を用意しています。 ホームページからもダウンロードできますのでご利用下さい。 http://jpa.umin.jp/kokoro.html 2)児童虐待の予防に向けて 児童虐待は統計を取り始めた平成2年から増加の一途をたどり、平成12年には児童虐待防止法が制定され、国を挙げての対応がなされてきていますが、減少の兆しはまだ見えていません。虐待の通告はそれに気付いた国民の義務ですが、児童相談所の他に平成17年からは市町村にもできるようになり、市町村には要保護児童対策地域協議会が設置されています。 平成21年度の全国の児童虐待通告件数は44,211件でした。年齢は小学校入学前が42%と最も多く、虐待の種類別では、身体的虐待39.3%、ネグレクト34.3%、心理的虐待23.3%、性的虐待3.1%でした。近年の傾向としては、ネグレクトの比率が増してきています。子どもにとっては適切な養育がなされていないことも虐待であるという認識が高まってきたことが伺えますが、性的虐待の比率はまだまだ低く、発見され難く通告に至っていない例が多いのではと推測されています。虐待者は実母が最も多く59%で、次いで実父26%です。この傾向は当初より変わりありません。 県内では、平成21年度、児童相談所への通告件数は805件(平成20年度813件)、市町村に759件(同839件)と、初めて前年数を下回りましたが、平成22年6月には新潟市でも父親による生後1カ月児の死亡事件が発生しています。 平成22年7月の大阪市2幼児放置死事件は、孤立していた若い母親一人を責めて済まされる問題ではなく、他人事とは思えなかった人も多かったことと思います。虐待の発生予防と早期発見・予防対応は喫緊の課題となっています。 経済的な困窮、不安定な就労、夫婦間の不仲、望まぬ妊娠、ひとり親家庭、親自身が虐待を受けた、育てにくい子どもなどなど、虐待に至る要因は様々ですが、これらの要因が複数重なり、そこにさらに孤立感が高まれば、虐待は誰にでも起こりえます。近年の脳科学の研究では、虐待は発達途上の子どもに脳機能障害をきたすことがわかってきました。特に乳幼児期では、愛着障害をきたし易く、人に対する信頼関係の基礎となる愛着形成不全の再構築には多大な困難をきたしてきます。 虐待予防策の一つとして、平成19年度からは、生後4カ月までに全戸訪問する「こんにちは赤ちゃん事業」が市町村で展開されています。もちろん従来通り、乳幼児健診でも育児の相談にのってもらえます。 子どもの世話をした経験がないまま親になる事が一般的となった現代、様々な子育て支援策が展開されていますが、県小児科医会では、子育て支援はまず親支援からとNP(Nobody’s Perfect完璧な親なんていない)プログラムの推進に協力してきました。NPプログラムは、子育てが難しいと感じている0〜5歳の子を持つ保護者向けにカナダで開発された親教育支援プログラムで、孤立育児の解消、育児不安の軽減に有効で、虐待予防にも期待され、急速に全国に広まってきています。新潟県内には平成22年度末で、106人のNPプログラムのファシリテーター(進行役)が養成されます。今後は、各市町村でプログラムが積極的に展開され、エンパワーされた親同士での子育て仲間の育成につながっていくことが期待されます。 3)子どもの遊びと子どもの心 外での遊び場が少なくなり、遊び仲間も近くにいない子ども達にとって、屋内でのテレビやビデオ視聴の他に、コンピューターゲームは今や揺るぎない地位を占めてきています。また、多機能な携帯電話も子どもの所持が容易な現代、事件に巻き込まれることが決して稀なことではなくなり、子ども達へのメディアリテラシイ教育が急がれます。ゲームは子ども達にとって代え難い魅力/楽しみとなった今、使用禁止ではなく、また子どもに管理をまかせっぱなしではなく、ルールを守って使っていく事を教えていきたいものです。 一方で、自然界での実体験が少なく、異年齢集団での子ども同士の遊びの体験もできにくくなっている子ども達は、現実と虚の世界の区別がつきにくい中にいるということも知っておく必要があります。 このような遊びの変化、人との関わり合いの幅の狭さ・希薄さが関係してか、学校での暴力行為は平成17年より目だって増加しています。文部科学省によりますと、平成20年度の暴力行為は3年連続増の6万件(平成16年度の約2倍)とあります。中学校が最多で42,754件(前年度比16%増)、小学校6,484件(同24%増)と小中学生で増加しています。不登校もなお小中学生で12万人(中学生では39人に一人)と減少傾向にはありません。登校渋り、休みがち、保健室等別室登校はそれ以上ですので、どの学校にも起きている大きな課題となっています。 日米中韓4カ国の中高生を対象に、(財)日本青少年研究所が平成16年に実施した調査では、「自分はダメな人間だと思う」としたのは中学生56%、高校生66%と日本が最も高く、ユニセフ(国連児童基金)の平成19年の「子どもの幸福度」調査では、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で15歳の子どもたちが「自分は孤独だ」と感じている割合は、日本は約30%(他国は約5%)と目立って高かったとあります。 「子ども一人育てるに村中の人が必要」とはアフリカの諺です。子どもは親だけでなく多くの大人の手で育てられるのが自然なのです。子ども達の遊び、人との関わりを考えていかねばなりません。 4)発達障害と子どもの心 平成17年に発達障害者支援法が施行になり、平成19年からは特別支援教育が全面実施となって発達障害への理解が進んできました。一方で、診断は? 治療は? 将来は? と困惑・混乱も起きています。 発達障害とは、診断名では広汎性発達障害(自閉症または自閉性障害、アスペルガー症候群またはアスペルガー障害、非定型自閉症または特定不能の広汎性発達障害)、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)、学習障害(LD)などが挙げられています。発達過程の中で症状に気付かれていきますが、脳の機能障害が原因であって育て方が原因ではないとされています。 広汎性発達障害では、社会性・コミュニケーションの障害の他に、こだわりや関心の幅の狭さがあり、些細な事でショックを受けやすく、臨機応変な集団行動がとれないことも多く、感覚過敏(聴覚過敏、嗅覚過敏など)も合併しがちで、不安感や苦手意識は一気に高まりパニックになることもしばしばです。不登校に至る機序としては容易に理解されます。感覚過敏には不快感の軽減が必要です。子どもからは言ってくれないことが多いので、察して対応しなければなりません。視覚情報の処理は優れている事が多いので、話しことばよりも絵や図・文字で示す事で、内容をより正確に伝える事ができます。安心できる環境で、自信を損なわないようにしてあげると、能力を発揮して問題無く居られるようになっていきます。 AD/HDでは、気が散りやすく落ちつきなくじっとしていられない、無くしもの忘れ物が多い、おしゃべりが過ぎる、何回注意しても同じ失敗をするなどで、よく叱られます。 叱るよりも先に誉めることが大事ですが、その余裕が大人の方に無くなってしまっていることが多いです。幸い、AD/HDには、薬物療法も可能になりました。 知的な遅れが無いのに読み・書き・計算のいずれかに困難を示す学習障害(LD)には個別の学習支援が必要です。 適切な理解がないと、わがまま・しつけが悪いと誤解され、叱られ続けたり過剰な我慢を強いられたりと、親子共々疲弊し、自己評価を低め様々な二次障害をきたしてきます。不登校や引きこもり、家庭内暴力、学校での暴力行為、非行、無気力、抑うつ状態、心身症、摂食障害(拒食、過食)などは、発達障害が背景にあっての二次障害ではないかと再検討されるようになりました。 育てにくさを示す子ども達ですので、虐待のリスクはあがります。いじめやからかいの対象にもなりやすく、守ってあげる必要があります。感じ方、学び方の違いを受けとめ認めていける保育、教育が必要です。ペアレント・トレーニングやソーシャルスキルトレーニングで具体的な関わり方、接し方を学べるようにもなってきましたし、幼児期の子育て支援から特別支援教育、そして就労支援までと、少しずつ制度も整備され対応策が広がってきていますが、まだまだこれからです。 生来の発達特性には、その特性で困らないような、それを強みとして活かせるような生活/社会参加の仕方を工夫していくことができるはずですし、二次障害は予防したいものです。発達障害を持つ子どもは1割近く存在すると言われています。早期の気づきと診断が大事とされますが、発達途上にあって環境要因に影響を受けながら変化していく子どもでは、確定診断できない場合も多くあります。診断が確定していなくても困り感には具体的な手当が必要です。その手当が適切であれば、問題が解消してしまうこともあります。発達障害を「障害」とするか、「ユニークな特性」とするかは、理解と具体的な支援策の有無にかかっていると言えます。 5)医療機関/相談機関 子どもの心の問題が心配される場合に診療や相談が受けられる主な機関を紹介します。 ①病院/医院 黒川病院(胎内市) 児童精神科 TEL 0254-47-2422 新潟大学医歯学総合病院 小児科/児童精神科 TEL 025-223-6161 県はまぐみ小児療育センター 小児科/児童精神か TEL 025-266-0151 県立吉田病院 子どもの心診療科 TEL 0256-92-5111 県立精神医療センター 児童・青年期外来 TEL 0258-24-3930 長岡中央綜合病院 小児心身症外来 TEL 0258-35-3700 新潟病院(柏崎市) 小児科 TEL 0257-22-2126 かわちクリニック(新潟市中央区) TEL 025-248-1030 常山小児科医院 (新潟市中央区) TEL 025-286-3311 その他にも診療を受け付けている医療機関はあります。多くが予約制ですので、確認してから受診をして下さい。 ②相談機関 中央児童相談所 TEL 025-381-1111 新発田児童相談所 TEL 0254-22-5111 長岡児童相談所 TEL 0258-35-8500 六日町児童相談所 TEL 0257-70-2424 上越児童相談所 TEL 0255-24-3355 新潟市児童相談所 TEL 025-230-7777 新潟県発達障がい者支援センターRISE TEL 025-266-7033 新潟市発達障がい者支援センターJOIN TEL 025-234-5340
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子どもの心ミニ知識 | ||
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第3講: 「子どものうつ病」の巻>> | ||
第4講: 「不登校」の巻>> |
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