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【 医療関係者へ 】 | 日本子ども家庭総合研修所・監修 「災害時における家庭支援の手引き」編集委員会・編 |
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突然の大災害にあったり、さまざまなストレス状況に置かれると、人々は精神的失調を生じることがしばしばあります。 子どもの場合には、まだ十分に精神的成長が達成されていませんので、大人以上にこのようなストレスに弱いことが予想されます。 このような災害時に、しばしばみられる子どもの精神的な症状とそれらへの対処の仕方、ならびに留意点を簡単にまとめました。子どもの診察をされる場合に参考にしていただければ幸いです。 A. 症状 突然の激しいストレスを体験した後で、子どもは以下のような症状を示すことがあります。 1) 恐怖体験を思い出して混乱する。 a. 突然不安になったり、興奮したりする。 b. 突然人が変わったようになる。 c. 突然現実にないようなことを言う。 d. 繰り返し悪夢をみる。 2) 外界に対する反応が低下する。 a. 表情が乏しくなり、ボーッとしている。 b. 話をしなくなり、引きこもる。 食事をとらなくなったり、遊ばなくなるなど、全体に活動性が低下する。 c. 注意力や集中力や記憶力が低下する。 3) 覚醒レベルが上昇する。 a. 不眠となる。 b. いらいらしたり、刺激に敏感となる。 c. 落ち着きがなくなる。 4) その他。 a. 自分が悪いなどの罪悪感を持ったり、あれこれと過剰に心配する。 b. 頭痛、腹痛、めまい、頻尿、夜尿などの身体症状がある。 c. 体の一部が動かなかったり、意識消失があるなどの、いわゆるヒステリー症状が見られる。 B. 対処法 このような症状を示す子どもは、被災によって精神医学的問題を持っていると考えられます。その場合には次のような対応が必要と考えられます。 1) 子どもに安心感を与えるように診察する。白衣は脱ぐ方がよい。 2) 子どもの話を時間をかけて聞く。共感的な態度で聞くことが必要である。できるだけ、子どもが体験した事実のみならず、それに付随した感情も表出してもらう。年齢の低い子どもや話ができなくなっている子どもの場合には、遊びや絵を描くといった方法が有効である場合がある。 3) 災害に遭遇した子どもにはこのような症状が出ることは珍しくないのだと説明する。 4) 治療関係ができあがり、子どもの情動が少し落ち着いてきたら、子どもが現在繰り返し体験している恐怖と現実とは違うと認識させるよう、働きかけをする。時間をかける必要がある。 5) 興奮が激しかったり、抑うつ状態が強かったり、不眠が持続するようなら、一時的に薬物の使用も必要になる。 a. 興奮が激しい場合は、一時的に抗精神病薬や緩和精神安定剤を体重比で計算して使用する。 b. 不眠が持続する場合には、ベンゾジアゼピン系の睡眠剤を使用すればいい場合がある。 c. 抑うつ状態が強い場合には、抗うつ剤を使用すればいい場合がある。 しかし、いずれの場合にも、薬物は根本的な治療法ではなく、一時的な対症療法であること、また10才以下の子どもの場合には薬物の使用は望ましくないことに注意すべきである。 C. 注意事項 1) 子どもの症状だけでなく、子どもの現在おかれている状況を把握する必要がある。 2) 親も被災者であることを十分に念頭に置く。親にも安心感と支持が必要である場合が多い。(親へのカウンセリング) 3) 十分に子どもの状態を親に説明し、治療協力者になってもらえるように接する必要がある。 4) 子どもはできるだけ通常の日常生活の中で、安心感や自己価値観を維持する必要があるので、家族に対して、子どもに安心感を与え、また、家族の中で子どもができる役割を与えるように指導する。 5) 子どもの環境に問題があれば、できるだけ良い環境になるように調整する。 6) 遊びや友達との関係も重要である。 7) 学校や避難所、さらには保健所や行政と連携を取って問題解決を図るようにする。 8) 子どもへの援助は長期的な関わりを必要とする場合が多い。その場合には専門家へ紹介する。 |
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(神戸市児童相談所のパンフレットより引用) |