自閉症と水銀・チメロサール 柳本　利夫

平成16年3月にある報道番組で自閉症の水銀キレート療法のレポートが放映されました。番組は自閉症と水銀やチメロサールが関係しているような内容でした。特にチメロサールは小児の予防接種ワクチンの安定化剤として使われていたこともあり、不安を感じた方もいらっしゃることと思われます。また、自閉症の新しい治療法として期待された方もいらっしゃるかもしれません。これに対し、日本小児神経学会、日本小児精神神経学会、日本小児心身医学会は、自閉症の発症や増悪に対して水銀・チメロサールが影響与えるのかどうか、自閉症に対する水銀キレート療法は有効であるか、について学術的知見を収集、整理しました。その結果、三学会合同の見解として現時点における判断をまとめ、平成16年6月1日に、声明として発表いたしました。声明は次の3つです。 　（1）自閉症の原因が水銀中毒であるということを積極的に肯定する根拠は乏しい 　（2）自閉症とチメロサール含有ワクチンとの間に明確な関連性は見出されていない 　（3）自閉症に対する水銀キレート療法の有効性を支持できる根拠は乏しい 　つまり、自閉症と水銀およびチメロサールとの関係を示すものはなく、水銀を除去する治療法の有効性もはっきりしないという内容です。 　最近の予防接種は改良がすすみ、安定化剤のチメロサールの含有量はかなり減らしてきており、また、チメロサールを使わないワクチンも出てきております。