2)離乳食の進め方
佐藤 敦子
 離乳食の進め方とは、1995年に厚生省(現在の厚生労働省)より出された『離乳の基本』によると、母乳、または乳児用ミルク等の乳汁栄養から幼児食に移行する過程をいいます。乳児にとって離乳食には『母乳やミルクでは不足してくる栄養を補給する』という大切な意味があります。このポイントに重点を置き、前述の『離乳の基本』をもとに各月齢ごとの離乳食の進め方をご説明致します。
 乳児にとって生後5ヶ月頃が離乳食の開始時期です。この時期は1日に1回ドロドロ状の食物を口にし、離乳食を飲み込む事や、味、舌触りに慣れさせるのが目的です。この時期は栄養を摂ることよりも乳児が食品に慣れる事が目的であり、母乳やミルクが主な栄養源になります。従って、離乳食は無理強いせずに乳児が欲しがるだけ母乳やミルクを与えることが大切です。また、アレルギーの心配のある場合には離乳食を与える側が安易に判断せず、医師の診断を受ける事が必要です。
 6ヶ月頃からは、離乳食を1日2回食に進める事と、毎食の栄養バランスを心がける事が目的となります。初めから2回食とも同じ量は与えずに、最初は2回食感の感覚に慣れさせてから徐々に2回目の食事量やレベルを1回目と同じにしていくことが大切です。6ヶ月の頃も、5ヶ月と同様母乳やミルクが主な栄養源です。また、離乳食の進み方には個人差がありますので乳児が嫌がっても無理強いしないということも大切になります。
 7〜8ヶ月頃は、2回食を軌道に乗せ、毎食栄養バランスをとる習慣をつける事、与える食品の種類を増やすことが目的となります。この頃も、まだ母乳やミルクが主な栄養源になります。
 9〜11ヶ月頃は、1日3回食に進める事と今まで以上に栄養バランスに留意する事が目的となります。それは、3回食にすることにより、乳児にとって1日に必要とするエネルギーの約60%を離乳食から摂取するようになる為と、乳児の体内に蓄積されていた鉄分が徐々に消費され、鉄欠乏性の貧血になりやすい時期でもあるからです。ミルクも今までの育児用ミルクより、フォローアップミルクを使用する事も鉄欠乏症貧血を防ぐためには有用です。フォローアップミルクは、育児用粉ミルクに比べ、鉄分や鉄分吸収促進作用のあるビタミンC、タンパク質が多く含まれており、乳児にとって食物からだけでは足りない鉄分を手軽に摂取する事ができるのです。この時期は、嗜好や口に出来る固さにかなりの個人差が出てきますので、乳児個人のペースに合わせ離乳食を進めることも重要です。
 12〜15ヶ月頃は、いよいよ乳児食へ移行させる準備期と考えられます。この時期は、乳児の生活リズムを整え、1日3回食事を摂取することを習慣化する事が目的となります。小児成人病を予防するためにも、“薄味”を心がけるこが大切になります。味の濃いもの、香辛料を使用したもの、消化の悪いものを除き衛生的に安全なものであれば、ほとんどの食品を使用することができます。
 このように5〜15ヶ月頃までの間で、乳児は母乳やミルクだけでなく離乳食から栄養を摂取できるようになり、自分自身でかむ力を育てていくのです。“栄養を補給する”という点に重点を置いて離乳食の進め方を、『離乳食の基本』をもとに月齢ごとにおおまかにご説明致しましたが、どの月齢においても乳児には個人差があるということを、離乳食を進めるうえで常に頭において進めていく事が大切になります。(なお厚生労働省の『離乳の基本』は2007年春改定される予定です。)
 『母乳やミルクでは不足してくる栄養を補給する』という他にも、離乳食には、固形食を食べられるようになるための練習をする、かむ力を育てるということと、多くの食べ物を味わい、香りを覚え、色をみるといった経験をするという意味もあります。何より、乳児にとってこれから一生続く“食べること”最初の経験として“食べる楽しさ”“食べる幸せ”を感じさせてあげるということが離乳食を進めるうえで最も大切な事だと考えられます。