8)ほめ方、しかり方
新田 初美
「子どもはほめて育てろ」とは古くからの伝えですが、言うは易し行うは難しです。自分で動けるようになると子どもは興味本意で次々と想定外のことをやってのけてくれます。危険もいっぱいです。言ってきかせてもわかっているのかいないのか。一日中気の休まることなくエンドレスに続く子どもとの付き合い。片付けても片付けても遠慮なく散らかされ、兄弟がいればけんかばかり。イライラしない人はいないでしょう。ついには声を荒げて叱り飛ばし、怒ってばかりいる自分にひどく落ち込んだり。
 時には感情的になってもいいのです。完璧な親なんていないのですから。子どもだってけっこうたくましくできています。迷いながらも一生懸命に添ってもらっている子どもは、喜怒哀楽豊かなお父さん、お母さんを丸ごと全身で感じ、安心(基本的な信頼関係としてとても大事です)を持って育っていきますので。でも体罰(暴力)はいけません。もし手が出そうになったら子どもの側から離れてください。そして深呼吸するか冷たい水を飲むかして一休みしてください。ほめることができないと悩んでおられる方、まずは自分の良いところ探しから始めましょう。そして開き直って自分をほめてみてください。余裕がなくて自尊感情が低下していたら子どもをほめる気力などわいてきませんし、些細なことでも許せなくなってしまいます。
 そこで作戦です。大人もそうですが子どもは注目してもらうことを好みます。ほめるのはもちろん良い注目ですが、叱るのも注目で、子どもにとっては無視されるよりはましなのです。「叱っても叱っても」という場合には、子どもはわかっていないのかもしれません。 
 子どもの行動によって親の注目の仕方に一貫性をもたせてわからせていくと、しつけは結構うまくいきます。具体的には、子どもの増やしたい行動はほめ(良い注目)、減らしたい行動には注目しない(無視する、反応しない)、やめさせたい行動には毅然と中断させる(叱る)という具合です。このようにすれば、子どもにもどう行動すれば良いのか伝わりやすく、親も感情的に叱らなくてすみます。
 まずほめることから始めましょう。 
 ほめるときには、何をほめているのか、どどの行動をほめているのかわかるようにしましょう。近づいて目線を合わせて感情を込めて、「座っていられてえらいね。」「静かにしてくれてありがとう。」といった具合です。子どもは良い注目(ほめる、認める)をたくさんもらうと自信がつき意欲的、積極的になります。
 困らせるような行動には叱るよりも無視して反応しない方がうまくいきます。例えば電話中に寄ってきて騒ぐなどです。無視すると注目してもらいたくて困らせ行動が一時ひどくなりますので、承知で無視し続けてください。反応してもらえないことがわかるとやみますので、やんだらすぐにほめてあげます。無視は、困らせ行動がやんで良い行動が始まったら、すぐにほめてあげることで効果があります。子どもの存在そのものを無視するのではありません。
 次に叱り方です。叱るのは教えることが目的であって、怒りをぶつけたり子どもの心を傷つけることが目的ではありません。
 できないことは叱らないでください。子どもの練習意欲をそぐことになります。結果でなく、がんばっている途中経過をほめるようにして応援してください。
 やめさせたい行動(危険、暴力、こまるいたずらなど)には、短くきっぱりと表情も真剣に視線を合わせて伝えます。大声でなく静かな言い方の方が、言う内容が伝わります。子どもには、どうしたかったのか尋ね、別のやり方を具体的に教えてあげることを忘れないでください。やめさせたい行動がやんだら、やめられたことをほめてあげます。後はあっさり水に流し、くどくど小言を言うのはやめましょう。
 欲張らないで、無理せず、子どもと一緒に感じながら進めていきましょう。