19)子育ての目標 その4

水がビチャビチャ

 私の医院の待合室には給水機があります。紙コップで水が飲めるようになっています。ある日の昼休み、午後の外来の準備で医院の玄関を開けていたら、何やら子どもの声が聞こえてくるので、見に行くと孫のレンちゃんとピッちゃんの声でした。なんと、給水機の前が水たまりでビチャビチャになっており、兄のレンちゃんが妹のピッちゃんに指示を出しながらティッシュで床を拭いていました。「どうしたの」ときくと「水を飲もうとしたらこぼれた・・」とのこと。ティッシュで水たまりをかき混ぜている状態でした。「ジジも手伝ってもいい?」と聞くと「いいよおー」とふたりから明るい返事をもらい雑巾を持ってきてふき取りを始めました。「おおすげえ」とふたりから賞賛をもらいながら「雑巾を使うと早いでしょう・・」と三人で床をきれいにしました。

子どもの「困った行動」

子育て中には子どもたちの「困った行動」は山ほどあります。毎日「困った行動」の連続と言ってもいいかもしれません。子どもの「困った行動」をよく見ているといくつかに分類できます。まず、子ども自身が、親を困らせる行動であることを知らない場合です。その場合は「それは困りますよ」と教えてやればいいことです。二つ目は、困らせる行動であることは知っているが、解決法がわからない場合です。解決策を教えてあげればいいです。三つめは、困らせる行動であることは知っていて、それで親の「注目・関心」を引き出している場合です。この場合、親が感情的に反応してしまうと子どもの目的は達成され、その「困った行動」は繰り返されることになります。

子どもの「失敗」

また、子どもの意図に目をつけた分け方もあります。親を困らせることが目的の「困った行動」と、困らせるつもりではなかったが結果として失敗した場合です。子ども達の「困った行動」は、よくみるとこの「失敗」が多いです。「失敗」という言葉にはマイナスの印象があるかもしれませんが、子育て中のママには「失敗」のイメージを180度転換していただきたいと思います。子どもは「失敗」から多くのことを学ぶからです。どうして失敗したか。失敗した時はどうするか。どうしたら失敗しないか。学ぶことはたくさんあります。「失敗」はお宝の山です。「失敗してひどく叱られた」ことしか学べないとしたらかわいそうです。

学べる年齢

子どもの「困った行動」や「失敗」は学びのチャンスです。しかし、子どもの年齢によってはうまく学べないことがあります。生まれてから3歳くらいまでの出来事は大きくなっても覚えていないことが多いです。また、自分の行動とその結果の因果関係を理解できるのは言葉が出てからです。言葉が出ると理解力や記憶力が増してきますが、4歳を過ぎる頃までは人の気持ちや考えを推察することは充分ではありません。小学生になるとようやく因果関係で考えをすすめていくことができるようになります。

子どもは毎日さまざまな経験をしています。この出来事で、この子は何を学ぶかということを、ぜひ考えてあげてください。そしてその学びをより膨らませてやることが、子どもの将来へのよいプレゼントになります。