16)子育てのの目標

 自宅のリビングの裏庭にシジュウカラ用の巣箱があり、春になると毎年、巣箱内で子どもを育て、やがて巣立ちをしていきます。5月の連休を過ぎた日の朝、ヒナの巣立ちの一部始終を目撃したことがあります。親鳥が巣箱の外でヒナに呼びかけると、ヒナが次々と巣箱から出てきます。巣穴から顔を出したとたんに飛び出して枝に飛び乗るヒナがいるかと思えば、穴から顔をだしたりひっこめたりして、なかなか出てこないヒナもいます。親鳥はそんなヒナも熱心に待ち続け、やがて子ども達全員が巣立ちすると、一家で巣箱を離れ、もう戻ってはきません。ヒナは飛ぶ力と自力で餌をとる力がないと生きていけません。それが親鳥の「子育ての目標」です。では、人間の子育ては何が目標でしょうか?自分の子育てを振り返ると「子ども自身がやりたいこと、なりたい人になって欲しい」という漠然としたことは考えていましたが、では「そのためにはどう育てたらいいのか」までは意識することはなかったように思います。子育て講座などで、ママたちに「どんな人に育ってほしいか?」を聞くと、「あまり考えていなかったけれど・・優しい人」「人に迷惑をかけない人」「元気で健康ならいい」「ちょっとのことでへこまない人」「ちゃんと自分の意見を言える人」などいろいろな意見がでます。「ではそんな人になるために、あなたは何をしますか?」と聞くと「私が子どもに優しくする」とか「子どもは親を見ているので親自身が気をつける」とかいう意見が出ます。ママたちは(私なんかより)よく考えていらっしゃると思い、感心しますが、一応子育て講座中ですので「健康な人に育てる」ことを提案します。身体だけでなく心も健康に育てたいのです。子どもによっては、生まれながらに病気を持っている場合があります、でも、心が健康であれば、よい人生をおくることができると思うからです。心が健康な人はどんな人かというと、まず「自立できる」こと、生活や経済的な自立だけでなく、自分のことを自分で決め、それに責任を持つことのできるという意味です。もうひとつは、「まわりの人たちと折り合いをつけて暮らせる」ことです。自己主張もするが相手の主張も聞き、折り合いのつく所で協力できる力です。シジュウカラは自分の翼で飛び、外敵からは素早く逃げ、エサは自分でさがし自立しなければいけません。そして、やがて成鳥になり、きれいな声で歌うのは、自分のテリトリーの自己主張と、彼女へのラブソングです。夫婦になると協力して子育てをします。自分の家族に献身的に貢献し続けます。そうして育てられた「ひよっこたち」もやがて成鳥になりまた同じような人(鳥)生をたどっていきます。

シジュウカラは「ツピツピツピ」と澄んだ声で鳴きますが、特に子どもに説教しているような場面はありません。まあ、自分の行動で身をもって子どもに教えているのかもしれません。