13)子育て力アップ講座 5 子どもの風邪薬の誤解(その4)

子どものころは頻繁に風邪をひきます。風邪には早めの風邪薬をと思いがちですが、残念ながら風邪薬には早く治す力や予防効果は期待できません。一方、昔から風邪の予防に手洗いとうがいをすすめられます。今回は手洗いとうがいの話です。

「神社に行くと」

 神社に行くと参道に手水舎(ちょうずしゃ)といって、参拝者用の水の施設が設置されています。ここで参拝者は手と口を清めます。感染防止という認識があったかどうかわかりませんが、いずれにしても、手洗いとうがいというのは神社の歴史ほどの昔から重要視されていたようです。

「手洗いとうがいの利点は」

 風邪の予防に手洗いとうがいは基本と言われています。でも、本当に効果はあるのか、害はないのかなどを改めて考える機会は少ないと思います。手洗いとうがいの最大の利点は、特別なものを準備しなくても今のご家庭の水道をそのまま利用できる点です。時間も経費もそれほどかけずにできる点が優れています。もし一定の効果が期待できるなら、これほど便利なものはないのです。

「手洗い効果研究」

 手洗いについては医学の歴史で有名な話があります。今も昔も女性にとり出産は大仕事ですが、昔はお産の後の産褥熱で命を落とすことが多かったようです。しかし、150年くらい前、ハンガリーの医師が「出産の処置の前に医師が手洗い」をすることで産褥熱が激減することを発見しました。この発見は現在の医療に継承されています。家庭内での手洗いについては、パキスタンでの調査で、手洗いをすると肺炎や下痢は約半分に、皮膚の感染症は3分の2に減ることがわかったそうです。中国での調査では手洗い習慣のある家庭のほうが手足口病やヘルパンギーナが少なかったという報告があります。

「手洗いに害はないのか」

 手洗いにともなう最も多いトラブルは手荒れ皮膚炎です。皮膚炎部位に化膿菌が増えてしまうこともあります。保湿剤をこまめに使用し手荒れを防ぎましょう。また、手洗いといってもそのやり方が不十分であれば効果はでません。せっけんを使いよく手をこすり合わせ、指のつけねや指の先、爪のまわりをしっかりと洗えるよう、手洗いのやりかたを子どもにも教えていくことも大切です。

「うがいに効果があるのか」

保育園児の調査では、うがいをすると発熱が32%少なかったという報告があります。高校生での調査ではうがいをするとインフルエンザが31%少なかったそうです。成人の調査でも風邪をひくことが36%少なくなりました。この成人の調査では消毒液より水道水を使った方が効果的だったとのことです。消毒液が粘膜細胞や常在菌を傷害した影響ではないかと考えられています。

「うがいに害はないのか」

  水道水によるうがいは特に害はないと考えられます。うがい液の添付文書では口内の荒れや刺激感などの副作用が記載されています。また、ポピドンヨード液の長期使用で甲状腺に影響がでた例もあるようです。

 

「手洗い・うがいどうすればいいか」

 完ぺきではないけれど、手洗いやうがいは風邪の予防にはそれなりの効果が期待できます。まずはおとなが率先してやってみせ、子どもはできる範囲で、取り組んでもらったらいいと思います。