9) 子育て力アップ講座 1 子どもの風邪を知る
子育て力をアップしよう
今回からしばらく「子育て力アップ講座」という名前で情報発信をしていく予定です。子どもをすこやかに育てるために役に立つ情報をシリーズでお伝えしていきます。子どもが元気な時も、病気で寝ている時も、いつも親はそばにいて寄り添っています。ですから親が子どもの健康について基本的な情報を知っていることはとても大切です。家庭の中でよく経験されることを中心に話題を選び解説します。
風邪ですよ
「風邪ですよ」と診断されるとちょっと安心し「風邪薬を飲ませて、寝せておけば治るな・・」と思われる方も多いと思います。しかし風邪という病気の定義がきちんと決まっているわけではありません。おおまかに言えば、鼻水や鼻づまりが主な症状で、発熱や咳をともなうこともあり、1週間ほどで自然に治っていく病気で、ほとんどがウイルス感染によるものといった病気を風邪と称しています。幼児は1年間で平均6〜7回は風邪をひき、小児の10〜15%は少なくとも12回は罹患するそうです。また、よく経験されることですが、保育所に行き始めるととたんに風邪をひき始めます。乳児が保育所にはいると家庭にいる場合より50%も罹患率があがるといわれています。
風邪の自然経過
風邪をひいた子どもをみていくにあたって、風邪の自然経過を知っておくことは大切です。この自然経過というのは、薬などで治療をしなかった場合の、自然の症状経過のことです。風邪で一番初めに気づく症状は発熱です。風邪の発熱は多くは3日程度でおさまります。しかし、時には5、6日続くこともあります。発熱からやや遅れて鼻水が出てきます。出始めはサラサラした透明な鼻水ですが、しばらくすると粘っこくなり、黄色や緑の色が付いてきます。鼻水にやや遅れて咳が出てきます。熱が下がる頃に咳がひどくなることがよくみられます。咳は夜もひどく出て大変ですが、数日で改善していきます。しかし中には数週間咳が長引く場合もあります。
風邪の理解のポイント
風邪の自然経過はそのたびに少しずつ異なることがむしろ普通です。熱の続く日数や鼻水や咳の様子などは様々です。しかし、ひとつだけ共通していることは、どのような経過をたどっても、風邪は最終的には自然に治るということです。これが風邪の理解の最大のポイントです。風邪をひくと風邪薬を飲むことが多く、風邪薬で治ったというイメージを持つことがありますが、実際には自然経過で治る時期が来て治ったというのが本当のところです。自然経過を知らないと風邪薬が効いたと勘違いすることもあります。
治療より必要なリスク管理
風邪が自然に治るのであれば放置しておけばよいかというとそれもまた問題です。風邪は経過の中で重症化する場合、合併症を持つ場合があり、そのリスクに対しては丁寧に管理していく必要があります。急性中耳炎や熱性けいれんは頻度の多い合併症ですし、脳症や心筋炎などは命にかかわってきます。風邪と思っていたら別の病気、たとえば川崎病や白血病だったという場合もあるのです。小児科医が気にしているのはむしろそのリスク管理です。