36)百日咳

 「コンコン、ゴホゴホ、ヒューッ」。咳(せき)が止まらず呼吸が苦しそうになる2カ月の男の子が来院しました。

 お母さんに「昨日の夜もこんなでしたか?」と聞くと、「夕べはもっと苦しそうに咳が続いて紫っぽい顔になっていました」とのこと。「お家でだれか咳が長引いている人はいますか?」と尋ねると、6歳の姉が1週間位前から咳をしていたそうです。

 血液検査で白血球が多く、百日咳だろうと判断し、「無呼吸や脳症を起こすこともあるから」と入院してもらいました。入院後の検査で百日咳と診断され、一時は呼吸器が必要な状況でしたが、なんとか持ち直し2週間で退院できました。

 百日咳が県内で流行しています。2018年1月から法律が変わり、百日咳は診断した医師が必ず届けを出さなければいけない病気になりました。その後の1年間、1万1190例のデータを見ると、年齢別では、7歳をピークとした5歳から15歳未満の学童期に大きな山があり、もう一つの山は生後6カ月未満でした=図参照=。

 成人においても患者は少なからず報告されています。患者の予防接種歴を見ると、百日咳ワクチンの4回接種歴がある者は全体の58%、5〜15歳に限定すると81%を占めました。一方、6カ月未満のグループでは未接種が73%を占め、百日咳ワクチンの接種前に当たる3カ月未満が55%と半数を超えていました。またその推定感染源はきょうだいが42%と最大でした。これは、百日咳ワクチンを4回受けていても、学童期になると獲得した免疫力が下がるために百日咳に罹患(りかん)し、まだワクチンをしていない赤ちゃんに移してしまうことが多いからです。

 重症化し命に関わる可能性がある、6カ月未満の百日咳患者を少しでも減らすには、学童期や成人の患者を減らすことが重要です。そのために、日本小児科学会では18年8月から、就学前に百日咳を含む3種混合ワクチンを、11歳で受ける2種混合ワクチンの代わりに3種混合ワクチンを受けるよう推奨しています。どちらも任意接種で有料ですが、子どもたちを百日咳から守るためにもぜひご検討ください。

 川崎琢也(かわさきこどもクリニック院長)