34)学校検尿

 学生のとき、毎年春になると自宅で朝、尿を採って学校に提出したことを覚えているでしょうか。あるいはお子さんがそうしているのを見たことがあるでしょうか。

 学校に尿を提出して検査するという、学校検尿の制度が始まったのは1974年のことです。これは、当時1年間に50日以上欠席している長期欠席者の原因疾患として、腎臓病が第1位だったことが背景にありました。

 毎年尿検査を行い、血尿や蛋白(たんぱく)尿が無いか調べます(尿糖も検査しますが、今回は省略します)。腎臓の病気を早期に発見、診断・治療することで、将来腎臓の働きが低下して透析や移植が必要になるのを防ぐことが目的です。

 腎臓の病気は、最初は症状がありませんが、尿の異常がみられることが多いのです。まったく無症状の子どもでも、尿検査で異常がみられた場合には、将来腎臓の機能が悪くなってしまう病気が隠れている可能性があります。

 具体的には慢性腎炎という病気、その中でもIgA腎症という病気の多くが学校検尿をきっかけに見つかります。

 IgA腎症は、放置すると腎臓の働きが落ちていく可能性のある病気です。学校検尿が無い欧米では、IgA腎症の多くが「真っ赤な尿が出た」と言って病院を受診して見つかります。それに対して、日本では症状が無いうちに学校検尿で早期発見されるケースが多く、早期治療に結び付けることができます。

 尿検査で異常を指摘されると再検査が行われ、再度異常が指摘されると精密検査となります。そこでの異常の頻度は図の通りですが、このうち血尿と蛋白尿の両方が続く場合には、慢性腎炎の可能性が高くなるため、「腎生検」といって腎臓に針をさして腎臓の一部を採取して診断します。

 学校検尿で慢性腎炎が早期発見されるようになり、慢性腎炎によって末期腎不全に進行する患者さんの数は、減少したといわれています。

 現在は、一般の尿検査で異常が現れにくい病気をどのように発見するか、研究が進められています。

 山田剛史(新潟大学医歯学総合病院・小児科)