33)小児の貧血

 貧血とは、赤血球に含まれる酸素を運ぶヘモグロビンというタンパクが少なくなっている状態です。顔色が悪くなったり、疲れやすくなったりして気付くことが多いです。

 原因として一番多いのは、鉄欠乏性貧血です。体の中の鉄分が不足して、ヘモグロビンを十分作れなくなるために起きます。生まれて6カ月くらいした頃と、思春期に多いです。6カ月頃は母体からもらっていた鉄を使い切る時期で、しかも体が急速に大きくなる時でもあるので、どうしても鉄が不足気味になりやすいです。思春期も体が大きくなる頃なので、特に女子は月経によるほか、ダイエットをしているとさらに鉄が足りなくなります。

 診断は、血液検査で容易につきます。赤血球は数自体はそれほど減っていなくても大きさが小さくなるため、分かりやすいです。血中の鉄や、フェリチンという鉄貯蔵に関わるタンパクを調べることも有用です。

 治療は鉄の補充です。鉄をたくさん含んだ食材=図参照=をしっかり食べましょう。鉄剤の内服も行います。最近ピロリ菌が原因の一つであることが分かっており、鉄剤を飲んでいても改善がいまひとつな時は、ピロリ菌の検査をするのが良いかも知れません。

 不足している分を補うのが大切で、必要以上に投与しても意味はありません。また、飲み薬であれば必要以上を飲んでも腸から吸収されないので、大きな問題は起こりにくいのですが、静脈注射の場合は直接血中へいくらでも入ってしまうので、過剰な鉄が肝臓や膵臓(すいぞう)、甲状腺や心臓の筋肉などいろいろな所に沈着し、こどもにとって良くないことが起こり得ます。なので、鉄剤を静脈注射で補うのは勧められません。治療はかかりつけ医とよく相談してください。

 その他、赤血球がいろいろな原因で壊れてしまう溶血性貧血や、血液を作る元になる細胞に不都合が生じ血液が作れなくなる再生不良性貧血、ヘモグロビン異常症などの先天性の貧血などがあります。胃潰瘍などからの消化管出血に貧血で気付くこともあります。

 白血病や膠原(こうげん)病などの病気で貧血になることもあります。「足が痛い」「おなかが痛い」とこどもが言った時に、足やおなかを診てもらっても改善しない時は、かかりつけの小児科医に血液も含めた全身を診てもらうことをお勧めします。

 渡辺輝浩(県立がんセンター新潟病院小児科)