29)食物アレルギーと皮膚

「食物アレルギー」という言葉は、子育てをされた方であれば一度はお聞きになったことがあると思います。

 赤ちゃんの約10人に1人が発症するとも言われており、意外と身近なものです。その症状としては、ある特定の食べ物(アレルゲン)を食べた後、2時間以内に皮膚が赤くなってじんましんが出たり、かゆくなったりすることが多いです。また、喉が苦しくなったり、おなかが痛くなったりすることもあり、ひどいときにはショック症状を起こして命に関わる場合があります。

 なぜ特定のものにアレルギー反応を示すようになるのか理由は分かっておらず、また大人でも突然発症します。誰のせいでもなく、いつどこでこの病気になっても不思議ではありません。

 赤ちゃんに食物アレルギーがあると、アトピー性皮膚炎が悪化することは以前より知られていましたが、食物アレルギーになる原因の一つとして、皮膚が最近注目されています。

 アレルギーの病気では初めてその症状が出る以前に、体の中で「感作」という現象が起こります。感作とは普通は体にとって無害なものに対して、過敏な反応を起こすためのいわば準備段階です。食物アレルギーの感作は、今までは主に食べたものが腸に入ることで起こるとされていましたが、最近では家の中にある食べ物のきめ細かいカスが皮膚から入ったり、繰り返し皮膚に触れたりすることにより、皮膚内でも感作が起こることが分かってきました。

 赤ちゃんにアレルギー体質があるとアトピー性皮膚炎を発症したり、それでなくとも乳児湿疹や乾燥肌になったりすることも多く、その場合、皮膚に炎症があって隙間ができていることになり、皮膚での感作も起こりやすいと考えられています。

 最近、このことから皮膚での感作を防げば食物アレルギーになりにくくなるのでは、との考えも出てきました。実際にそれを証明するような研究結果もあります。まだ確実ではありませんが、近い将来赤ちゃんの食物アレルギーの予防方法として、皮膚が荒れないようにスキンケアをすることが最重要となるかもしれません。

 高見暁(新潟医療センター小児科)