28)成長曲線

 小中学生の健康診断で、座高測定が必須ではなくなったのはご存じでしょうか? これまでの健康診断は、ある時点での身長や体重を評価し、肥満や痩せ、低身長を抽出していました。2016年度からは、成長曲線を用いることで、今までの肥満や痩せ、低身長に加え、肥満や痩せの悪化、身長の伸びの低下などを捉えられるようになり、小児のさまざまな疾患の早期発見につながる可能性があります。

 成長曲線とは、いろいろな年齢の子どもを男女別に多数集めて身長と体重を測定し、年齢別の平均値を曲線でつないだものです。成長曲線には3、10、25、50、75、90、97の数字が付いた基準線があり、この数字は「パーセンタイル」で表示します。全体を100とした場合、数値の小さい方から何番目に位置するかが分かります。3パーセンタイルの身長曲線は、100人中で前から3番目の高さに相当します。3から97パーセンタイルの間がおよその正常範囲としています。

 SD(標準偏差)スコアという評価方法もあります。SDスコアがマイナス2SD以下の低身長の子どもは、全体の2・3%にあたります。このグラフを作成することで、視覚的に成長を評価できます。

 全国の小・中・高校に配布されたプログラムには、スクリーニング機能があり、成長異常を自動的に検索することができます。それをもとに学校医の判断で、精査対象とするか否かを判断します。かかりつけ医または小児科医を受診し、必要あれば小児内分泌専門医などへ紹介します。身長の伸びが異常に小さい人は、脳腫瘍、甲状腺機能低下症などの異常が見つかる可能性があります。

 成長障害(低身長や成長率低下、肥満や体重減少)をみとめる際には、小児に何らかの問題がおきている可能性があり、医療的な介入が必要です。今後は、学校保健の現場で成長曲線が活用され、より早期にさまざまな成長異常がある児童や生徒が見つかるようになります。

 この新しい健康診断を機能させていくために、行政、養護教諭、学校医、小児科専門医が協力し、よりよいスクリーニング体制を築いていきたいと思います。

 長崎啓祐(新潟大学医歯学総合病院小児科講師)