27)ヒトメタニューモウイルス感染症

 ウイルス性肺炎は乳幼児期を中心にみられ、年齢が進むにつれて減少していきます。さまざまなウイルスが原因となりますが、その一つとして「ヒトメタニューモウイルス」があります。

 聞き慣れない名前ですが、それもそのはず、2001年に発見されたニューフェースだからです。これまでにも存在していたウイルスなのですが、ようやく見つけることができたのです。発見が遅れたのは従来、ウイルス分離が困難だったからです。また迅速検査キットが開発され、2014年から保険収載となり、医院でも簡単に検査できるようになりました。そのため臨床像がだいぶ分かるようになりました。

 流行時期はこれからの時期、3〜6月ころで、母親からの移行抗体が消失する生後6カ月ころから感染がみられるようになります。2歳までに50%、10歳までにほぼ全員が感染すると考えられています。小児期のウイルス呼吸器感染症の5〜10%を占めるとされます。初感染の後も再感染を繰り返しながら軽症化していきます。

 潜伏期は4〜6日くらいです。症状はせき、鼻汁、喘鳴(ぜんめい)を伴い、発熱が7日間ほど続き、気管支炎、肺炎を起こします。効果的な抗ウイルス薬は今のところありません。水分・栄養補給、保温、安静といった対症療法が中心となります。また、呼吸困難が強い場合は入院が必要となります。飛沫(ひまつ)感染と接触感染によってうつるため、乳幼児の多い保育園では感染が広がりやすいことがあります。鼻汁、喀痰(かくたん)などが手指、触ったものなどに付着し接触感染することもあり、また、保育者の手などを介して接触感染しますので、「手を洗うこと」が非常に重要です。RSウイルス感染症と似ていますが、流行時期が春先であることや罹患(りかん)年齢層がやや高いことに多少の違いがあります。迅速検査キットは簡便にできますが、保険診療で行うには条件があります。「画像診断で肺炎が強く疑われる6歳未満の患児」が対象となりますので注意が必要です。

竹内菊博(たけうち小児クリニック院長、新潟市)