22)ピロリ菌と子ども

 ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の胃への持続的な感染が胃炎や胃潰瘍、ひいては胃がんの原因となることが広く知られるようになりました。日本人の胃がんの実に99%でピロリ菌がその原因となっています。いったいピロリ菌はいつ、誰から感染するのか疑問を持たれる方も多いと思います。

 ピロリ菌は5歳以下の幼少児期に感染した場合に、持続感染することが知られています。また家族から(主に親から子どもへ)あるいは集団生活を通じて感染します。日本人の感染率は60歳以上では50%を超えますが、年齢が低下するに従い感染率も低下しており、小児・青年期は2・5%です。

 ピロリ菌の持続感染により少数の子どもが胃・十二指腸潰瘍や免疫原性血小板減少性紫斑病を発症しますが多くは無症状です。注意が必要なのは10代の鉄欠乏性貧血でピロリ菌の持続感染による鉄吸収障害が原因となっていることが時にあります。鉄剤とピロリ菌の除菌療法を併用することで貧血の治癒率が高まります。

 さて世界保健機関(WHO)は2014年に胃がんの予防にあたり、各国の実情に合わせたピロリ菌感染対策の実施を勧告しました。そのためピロリ菌感染の三つの特徴を踏まえ、胃がんの予防を目的に中・高校生を対象としたピロリ菌検診および薬を用いた除菌が日本各地で始まっています。その特徴ですが、まず一度除菌した後の再感染は起きにくい点。次にピロリ菌による胃炎が進行した成人を対象に除菌を行っても胃がんの予防効果が十分ではないのと対照的に、感染早期の若年者の除菌はより確実な予防効果が期待される点。さらに若年者の除菌は家族内感染による次世代への感染の予防にもなる点です。

 佐賀県では全県規模で中学生のピロリ菌検診を行っていますし、県内でも長岡市と長岡市医師会が中心となり市内の中学校2年生を対象としたピロリ菌検診を2016年度から開始しました。若年者のピロリ菌除菌は一人一人が将来胃がんになることを防ぐと同時に、家庭内感染も予防することにより「ピロリ菌による胃がんを日本から撲滅する」ことのできる対策です。先進地域の検診と除菌は既に実績を上げています、より有効な方法が確立して全国的な普及が望まれます。

 小川淳(県立がんセンター新潟病院小児科)