21)学校心臓検診

「うちの子は元気そのもの、心臓病なんて縁がない」。そんなお子さんでも小・中・高校の入学時に必ず受けるのが学校心臓検診です。

 心臓病は息が苦しそう、顔色が悪いといった症状や、心雑音など診察での異常がきっかけで気付きます。医学の進歩もあり、生まれつきの心臓病の多くは、小学校入学までに診断されます。しかし症状が乏しく気付きにくい心臓病や、成長期に発病する心臓病もあります。

 このような心臓病を見つけるために学校心臓検診があります。そしてその中には突然の動悸(どうき)や意識消失を起こしたり、放置すれば命に関わる心臓病も含まれています。危険な症状が起こる前に見つけることがとても重要です。それには心電図検査が役立ちます。

 では学校心臓検診で見つかる心臓病とは、どのようなものでしょうか。以前は生まれつきの心臓病も多く見つかっていました。しかし現在、最も問題になるのは“脈”の乱れ、不整脈です。心臓が押し出した血液が血管を通り、血管が拍動します。これが脈です。つまり脈の乱れは心臓の動きの乱れです。学校心臓検診で見つかる不整脈の多くは心配のないものですが、乱れがひどいと血液が十分に全身に行き届かず、具合を悪くします。

 さらに心臓の筋肉の異常、心筋症も見つかります。中でも心臓の筋肉が過剰に厚くなる肥大型心筋症は、小学校入学後から思春期頃に多く発病します。症状に乏しいので、学校心臓検診で初めて分かることが珍しくありません。

 それでは学校心臓検診で心臓病が見つかったらどうするのでしょうか。

 治療の必要がない人がほとんどですが、成長とともに悪くならないか、定期的に経過を見ることがあります。また症状があったり、具合を悪くするかもしれない場合は、生活管理をしたり薬を飲んだりします。

 しかし残念ながら、学校心臓検診でも見つけにくい心臓病があり、治療をしていても急に具合が悪くなることもあります。そこで大切なのが一般の方による救命処置=心肺蘇生です。学校心臓検診と心肺蘇生法の普及などで子どもの突然死の頻度は20年前に比べ、約3分の1になっています。

 鈴木博(新潟大地域医療教育センター魚沼基幹病院小児科特任教授)