16)おねしょと夜尿症

 春の入学シーズンです。親子で悩む問題の一つに夜尿症があります。学童本人への統計調査では、両親の不和、離婚などに次ぐ、深刻な悩みだそうです。

 「おねしょ」と「夜尿症」の違いは、年齢がポイントです。幼児期は「おねしょ」で、自然に治るのを待ちましょう。6歳の小学校入学以降は「夜尿症」と呼び、ここからが治療開始の対象になります。

 夜尿は、子ども全体では5歳の20%、小学校低学年で10%、10歳児で5%にみられます。そして年齢とともに体のしくみが整い、自然に治るのが原則です。特に入学境目の時期からは1年経過するごとに、夜尿症の子どものうち10〜15%ずつが治るようです(成人でも少数、夜尿症はあります)。

 体に悪影響を及ぼす病気でないし、本人の気恥ずかしさもあり、受診をためらい毎日が過ぎることも多いでしょう。しかし、夜尿がほぼ毎日の学童では、治療を開始して中学生になって改善するなど、長い時間が必要なこともあります。また、からかいや叱責(しっせき)の対象となるかもしれない自分の秘密…こんなふうに悩む毎日で、自信を失い自己評価が低下する。放置した夜尿症が精神的ストレスになり、日常生活に悪影響を及ぼすこともあるでしょう。

 年齢と夜尿の頻度(毎日か、週に数回か)をみながら、小児科の医療機関を受診することを考えてはいかがでしょうか。

 医療機関にかかることによって治る割合が増え、また、治るまでの期間が短縮します。少数ですが急に治る小児もおり、早く受診すればよかったという感想も聞かれます。

 親子でまず相談されて、子ども本人が夜尿症を治そうと積極的に取り組む気持ちになったら、受診のタイミングです。治療の基本は夜尿が治りやすくなる生活への指導と、いろいろな夜尿症タイプ別の薬物治療などです。

 その第一歩は、(1)夜に水分を控える(2)寝る前に必ず排尿する(3)就眠の2〜3時間前に夕食を終える−といった「生活リフォーム」です。

 郡司哲己(長岡中央綜合病院小児科部長)