11)子どもと遊び

 赤ちゃん講座で、わらべ歌遊びのやり方を教わりました。保育士さんの歌声がほのぼのとして美しいと感じました。早速、孫が遊びに来た時に教わった歌で遊んでみました。下手な歌でしたが、孫の笑顔に私はついうれしくなりました。

 「最近のママは赤ちゃんとの遊び方を知らない…」という声を耳にしたことがあります。そのようなママにわらべ歌はお勧めです。親子の触れ合いが大切といわれ、「遊ばなければ…」と義務的に赤ちゃんに触ってみても楽しめないと思います。ママ自身が楽しんで、赤ちゃんと笑顔を共有するその瞬間が大切なのです。

 子どもは全力を挙げて遊びに身を投じます。遊びが、ヒトとして社会で暮らしていく基本になることを本能で知っているかのようです。おとなは、遊びというと「気分転換」「趣味」「道楽」などをイメージしますが、子どもの遊びはそれとは違います。もっとヒトの本質に関係したものです。脳神経の「遊びシステム」を提唱している神経科学者のヤーク・パンクセップによれば、子どものくすぐり合いや取っ組み合い遊びは、喜びあるいは幸福感を生み出すだけでなく、多くの社会的スキルの獲得を促すそうです。
 遊びは生の対人関係を必要とします。パソコンで精密な遊びのゲームプログラムができたとしても、生きた対人関係にはなりません。日本小児科医会が「スマホに子守をさせないで!」と警告を発している理由の一つはそこです。ヒトとヒトとの直接の触れ合いの中に、社会性は育まれていきます。さらに、遊びは適切な環境が必要です。温かく支援的、家庭的な雰囲気の中でこそ、笑顔や笑い声が出てくるのです。

 最近、医院の親子支援室で「あそびのおへや」を始めました。赤ちゃんとママの触れ合い遊びをしています。ママたちの元気な笑い声がとても健康的です。おとなと子どもが楽しさを共有したその時に、きっと良質の遊びが創られることでしょう。

 柳本利夫(新潟市小児科医会会長、やぎもと小児科院長)