10)乳幼児と情報機器
小児科の待合室で、親はスマートフォン(スマホ)の画面を見詰め、子どもはゲームに夢中、名前を呼ばれても親子ともに気がつかないという場面は珍しくなくなりました。
現代の子どもたちは、テレビ、DVD、パソコン、タブレット、スマホ、ゲーム機など(以下メディア機器)に囲まれて育っています。メディア機器は便利で、娯楽や情報を与えてくれますが、半面、子どもへの悪い影響(薬で言えば副作用)もあることがわかってきています。
乳幼児期から長時間メディア機器を使用すると言葉の発達が遅れる、表情に乏しい、落ち着きがないなどの兆候が現れると報告されています。また、年長児では筋力や視力の低下、血圧・体温調節不良、友達関係がうまく築けない、自己肯定感の低下、キレやすい、学力低下等の兆候がみられ、インターネット・ゲーム依存症へのつながりやすさも指摘されています。
中でも、スマホはここ数年であっという間に私たちの生活に入り込んできました。親の代わりに子どもを叱ったり、あやしたりするアプリがあり、使用している保護者も多いと思われます。しかし、これらのアプリは子どもたちの脳や体にどのような影響を与えるかという調査、薬で言えば臨床試験が全くなされないまま普及しています。
人間は相手の表情を見て話し方や表情を変えますが、スマホは子どもが怖がっていても、笑っていても表情の変化を認識せず、一方通行のコミュニケーションしかできません。そのため、不適切な使用でトラウマ(心的外傷)を生じたり、親子の愛着形成がうまくいかなくなったりする可能性が指摘されています。
このような悲劇を避けるためには、乳幼児期からのメディア機器への接触を保護者がしっかりとコントロールする取り組みが大切です。まず、大人がメディア機器への接触時間を短くして、子どもたちと向き合う時間を増やし、子どものより良い成長を促していきましょう。
佐藤昌子(佐藤内科小児科医院副院長)