6)チャイルドシート

「急変です、すぐに来てください!」。私が急患外来に駆け付けると、ベッドに乳児が横たわっていました。頭のけがで治療中に状態が悪化したのでした。救急科、脳外科の医師に私を含めた小児科医も加わり、何とか状態を安定させ、集中治療室に入室しました。

 交通事故による受傷で、車にはチャイルドシートが備え付けられていたものの、ベルトで固定せずに寝かされていて、衝突の衝撃で床に転落したとのことでした。

 新潟市民病院には交通外傷の子どもたちも多く受診します。私は小児科医ですが、時に他科の医師と共にけがをした子どもの治療に当たることがあります。そうした経験から、チャイルドシートをしていない事故では重傷者が多いとずっと感じていました。

 グラフは過去5年間に交通事故で市民病院を受診した子どもたち(6歳未満)の、受傷時のチャイルドシート装着の有無と重症度の関係を表しています。シートを装着していた場合は約8割に当たる子どもたちが全く無傷(異常なし)で、処置は必要ありませんでした。

 しかしシートを装着していないか、冒頭のように正しく使用していない場合には、同じく約8割の子どもたちがけがを負っています。重症度もより高く、それだけ長期入院となり、重い後遺症を残したり亡くなったりした方もいました。

 教訓的だったのは、高速道路で大型トラックに追突され、車は大破したにもかかわらず、チャイルドシートを装着していて軽症で済んだ方がいた一方で、乗車中の兄弟のうち、泣いた兄をシートから下ろして親が抱っこしたところで他車と衝突し、兄が頭に大けがをした(シートを装着していた弟は無傷)ケースがあったことでした。

 小児は、いったん心停止に陥ると成人よりはるかに救命が困難です。そして心停止の最も多い原因は、不慮の事故なのです。日々の診療で、事故は身近なものだと痛感しています。チャイルドシートで大切なお子さんを守ってあげてください。

 阿部裕樹(新潟市民病院小児科副部長)