5)子どもの熱中症

 今年も暑いシーズンが到来しました。熱中症とは高温環境下で起こる体の障害をいいます。軽症(熱失神、熱けいれん)、中等症(熱疲労)、重症(熱射病)の三つに分類されます。

 熱失神は炎天下でずっと立っている場合などに起こります。熱を放散するため皮膚の血管は拡張していますが、起立することで下半身に血液がたまって低血圧となり、脳への血液が減少してめまいや失神が起こります。

 熱けいれんは激しい運動で大量に発汗し、水分や塩分が失われたところに水分のみを補給し、塩分の補給がない場合にみられます。四肢や腹部の筋肉などにけいれんや痛みが起こります。

 熱疲労は大量の発汗による脱水と皮膚の血管拡張による循環不全によって起こります。体温上昇(40度以下)のほか、全身倦怠感(けんたいかん)、頭痛、めまい、嘔吐(おうと)などがみられます。

 熱射病はさらに体温調節機能が破綻し、脳、心臓、肝臓、腎臓、筋肉など全身臓器に障害を及ぼし、死に至る可能性があります。体温は40度を超え、意識障害やけいれんなどがみられます。救命のため早急な処置が必要です。

 子どもは汗腺が未発達で体温調節が不十分ですが、体重当たりの体表面積は大人より広く、皮膚からの熱の放散でこれを補っています。しかし環境温が皮膚温より高い状態(炎天下など)では、逆に熱をもらい体温が上昇しやすくなります。また外出時には、乳幼児は身長が低いため地面に近く、成人より高温(3度程度)の環境にいます。

 予防には暑い場所を避け、発汗で失われた水分や塩分を小まめに補給することが大切です。運動中は喉が渇いてからではなく、定期的に水分や塩分を補給しましょう。

 屋内や曇天下の車中でも熱中症のリスクがあります。乳幼児が発熱してぐったりしていたら熱中症を疑うことも大切です。予防法や応急処置を知れば、熱中症から大切な子どもの命が救えます。対処法は図を参照してください。

 塚野真也(県立新発田病院小児科部長)