3)冬のウイルス性胃腸炎
外来で診療中、「先生!またけいれんです」とお母さんから切迫した声で呼ばれました。発熱、嘔吐、下痢で点滴をしていたロタウイルス胃腸炎のお子さんが2度目のけいれんを起こしたのです。けいれんは注射薬で治まりましたが、病院に入院することになりました。幸い、最も重症な「ロタウイルス脳炎」ではなく、胃腸炎に伴う「良性乳児けいれん」でした。
冬場に流行する子どものウイルス性胃腸炎の原因はロタウイルスとノロウイルスが多数を占め、その対策が重要です。どちらも伝染力が強く、ノロウイルスは主に冬の前半、ロタウイルスは後半から春先に流行します。
ロタウイルス胃腸炎は主に5歳未満の乳幼児に多く、乳幼児の胃腸炎の中で最も重症化しやすいウイルスです。発熱と嘔吐、下痢で脱水症状を来し、入院治療が必要になることもあります。
日本では、毎年およそ未就学児80万人が受診し、8万人が入院、約10人が死亡するといわれています。脱水症状だけでなく脳炎、腎障害など重い合併症を起こすこともあります。小児の急性脳症・脳炎の原因としてはインフルエンザ、突発性発疹に次いで3番目に多く、全体の4%を占めてい
ます。抗ウイルス薬がないため、一度かかると重症化を予防する決め手がなく、ワクチンによる予防が最も効果的です。
日本でもようやく2011年11月、12年7月にロタウイルスワクチンがそれぞれ1種類発売になりました。生後6週から接種でき、重症化を約90%予防してくれます。注射でなく飲むワクチンなので痛くありません。接種できる週数が決まっているので、早期の接種をお勧めします。
一方、ノロウイルスは子どもに限らず大人も感染し、毎年、食中毒患者の半分を占めると考えられています。非常に感染力が強く、生きたウイルスがわずかに体に入っただけでも感染します。ウイルスで汚染された食品(生カキやサラダなど)を食べたり、汚染された物を触って手から口、体内へと入ったり、吐しゃ物などが乾燥して空気中に舞い上がり、それを吸って感染したりすることもあります。
最近では浜松市でノロウイルスに汚染された給食のパンを食べ、千人を超える子どもたちの集団食中毒も起きました。
ノロウイルスはワクチンがありません。図などを参考に感染を予防することがとても大切です。
川崎琢也(県小児科医会会長、かわさきこどもクリニック院長)