1)ワクチンデビュー
すやすやと気持ちよさそうに寝ている赤ちゃん。それをうっとり見つめるお母さん。この赤ちゃんが将来、どんな幸せを家族に与えてくれるのでしょうか。しかし、そんな幸せも、ちょっとしたことで取り返しがつかなくなります。その代表格が感染症です。
赤ちゃんの周りはばい菌、つまり病原性微生物だらけです。この病原性微生物から身を守るための仕組みがいくつかあります。例えば、へその緒を通してお母さんから赤ちゃんに渡されるlgGや、母乳の中にあるlgAというタンパク質です。これらが喉や腸から侵入してくる微生物から守ってくれます。
でも完全ではありません。特にlgGは6ヵ月でなくなってしまうので、これらをすり抜けて微生物は襲ってきます。
その中でもヒブと肺炎球菌という細菌は恐ろしい微生物です。細菌が原因の髄膜炎と敗血症の約90%が、これらによって引き起こされることが知られています。県内では2007〜10年の4年間、この二つの細菌による子どもの髄膜炎が計34人報告され、そのうち7人が命を落としたり、発達の遅れや難聴などの後遺症を残したりしました。
でも安心してください。これらはワクチンの予防接
種で防げる病気なのです。ヒブワクチンは欧米に20年遅れて08年、肺炎球菌は10
年遅れて10年から、日本で使用できるようになり、予防接種が広がりました。
予防接種の効果は出ています。本県など10道県で行われた調査で、5歳未満10万人当たりの細菌性髄膜炎発症率は、08〜10年の3年間と12年を比べ、ヒブが原因のものが92%、肺炎球菌は71%、それぞれ減少したことが明らかになりました。12年は県内で、ヒブまたは肺炎球菌による髄膜炎は5歳未満で1人もいませんでした。
両ワクチンは13年度から無料になりました。生後2ヵ月たったら、これらの感染症にかかりやすくなる6ヵ月まで、1ヵ月ごとに3回接種して免疫をつけましょう。この二つ以外にも口タウイルス、B型肝炎ワクチンも2ヵ月からお勧めです。
早く免疫をつけるには同時接種が必要です。同時接種は世界中で行われ、有効性と安全性に問題ないことが分かっています。
何事もスタートダッシュが大切。ワクチンデビューは生後2ヵ月からですよ。「1歳までに受けることが望ましい予防接種」の表を参考に計画を立てましょう。
笹川富士雄(県小児科医会前会長、ささがわ小児科クリニック院長)