11)50センチの高さ

私の医院では柵のある乳児用ベッドがあります。乳児の安全を考えて用意したものです。しかし、日本小児科学会の傷害速報には同じような乳児用ベッドからの転落事故の報告がありました。生後11か月の男の子が自宅和室の乳児用ベッドの中に入れられていました。男の子は伝い歩きができる子でした。ベッドの柵は床から85センチの高さがあり、柵の隙間は8センチで柵をすり抜ける心配はありません。母親は台所で洗い物をしていましたが、急に泣き声が聞こえ、和室に行ってみるとベッドの中にいたはずの男の子が畳の上で泣いていました。85センチの柵を乗り越えてベッドの外へ落ちたことになります。実はこのベッドの柵には横桟(横の棒)があり、この横桟から柵上部までは35センチだったのです。男の子はこの横桟に足をかけて登り、柵越しに外をのぞきこみ、畳の上まで落ちたらしいのです。このくらいの月令の子は50センチ未満の高さの柵からのぞきこむと頭が重いため転落します。柵の横桟は柵上部までの高さを50センチ以上に設計すべきでした。「50センチ未満の高さは転落の危険がある」というのはベッドだけではなく、いろいろな家具や窓にも当てはまります。「50センチの高さはあぶない!」です。